たまに冷たい風が一瞬だけ吹く暖かい春の日

春が、来た。

 

春は楽しくてつらい。

暖かくなってきて桜が咲いて気持ちがポヤポヤァ〜っとするのも春だし、僕が大学を中退したのも春だ。松たか子の最低最悪のサイコ・ソング『明日、春が来たら』を誤って聴いてしまったのも春(過去記事参照:http://your-francesco.hatenablog.com/entry/2015/03/19/231007)。姪っ子が生まれたのもそういえば春。

 

‪姪が生まれたと聞き駆けつけて、母親と病院から帰るとき、駐車場を歩きながら母親が「あんたの子どもはどんなだろうね」って言うから「俺は無いものと思って期待しないで」って返したら「なにそれ」って無理やり笑いながら小突いてきて、無理やり笑ってるのバレバレでさ、俺にはその時間が過ぎるのが無限に長く感じて泣きそうなのを必死で堪えてた‬。母親に運転頼んで、家に着くまで後部座席に仰向けになって気を紛らわそうとツイッターを見たよ。それも春。

 

桜祭りもあるよね。

薄暗くなり始めの、でもまだ明るくて、たまに冷たい風が一瞬だけ吹く暖かい春の日。

一瞬だけ吹いた冷たい風に空気がかき混ぜられて、古い家の蛇口からお湯と水を一緒に出したときみたいな冷たくて暖かいあの感じが体をザッと洗い流していく。一瞬息ができなくなって、次の瞬間蘇って深く吸い込んだ春の匂いと音に脳が蕩けて卒倒しそうなあの春の夕方。

テキトーな格好でテキトーに集まって好きに食べるし好きに飲む。お前この間もそのTシャツだったじゃん。お前こそそのくたびれたヴァンズどうにかしろよ。

食べながら飲みながら話しながら、桜祭りからだんだん遠ざかって、コンビニかドンキで安い9%のチューハイとか買って、つまみはさっき屋台で買ったお好み焼きとたこ焼きがまだあるから大丈夫、右手に持ったチョコバナナはさすがにつまみになんないけど。

ふいに会話が落ち着いた、その時にはもう何話しながら飲んでたかなんて忘れてるし、気づいたら人もまばらで公園のベンチに腰掛けてるのも自分たちと遠くに見えるカップル?くらい。

てか寒くね?

俺も思った(笑)

そろそろ帰るかー

お互いまだ今日を終わらせたくないから帰ってる途中でどっちかの部屋に泊まることになって、

だったら飲み物とか食べ物買ってくか。

じゃあさっきのコンビニかドンキ戻んなきゃじゃん(笑)

まあいいじゃんあったけーし

さっき寒いっつっただろ(笑)

いや、春だからさー

なんだよそれ(笑)

帰った部屋ですぐ靴下脱いで、ああ、たくさんモノが入ったビニール袋を下げてる音っていいよなあ。テーブルにゴトっと置く感じもいいよ。んでテキトーに乾杯し直して。やっぱ何回開けても冷蔵庫にはなんもねーや。そういやこないだお前が言ってたアレ、録画してあるけど。

 

お互いあんまり酒にも手つけなくなってきて、時計見たらあぁもうこんな時間か、普段なら普通に寝てんな、つうかお前眠いだろ、めっちゃ眠そうな顔してるぞ(笑)

そろそろ寝るか、って言って電気消したら、消したばっかでまだ青白い天井のライトに照らされた部屋で一気に今日のことを思い出して、あーってため息とも声ともつかない気の抜けた音が四隅にこだまする。

やっぱあと一口飲んでから寝るか。

それも春。